幣束(へいそく)について
お寺や神社また地鎮祭やお正月によく見かける幣束(御幣:ごへい)は、遠い昔より私たちの先祖が自然の中に神々の息吹を感じ、その大いなる導きを信じて暮らしていた中、日本の神道より生まれた。
その歴史は古く、その起源は遠く太古にさかのぼる。神々を崇い畏れる敬虔な心と恵み多き自然の中で生かされていることへの感謝の思い、神々への祈りを捧げる神事における必要性から生まれたものである。
幣束(御幣)は昔から、神の乗り物と云われるが、それは開いた形が人の姿に似ているからとされる、幣束は、和紙を作法に従って切り開いて祈り、神仏の前 に立てたり吊るしたりし、神仏の拠処・境界を示すもので、神仏境と俗界を区別する注連(しめ・七五三)や神仏を現わす幣台の付いたものなど数多くある。
「幣」という文字は「ミテクラ」「シデ」「ヌサ」「ニキテ」「オンベイ」「ヘイ」などと、古来より数多くの読み方をされているがこの文字は、「巾」の上 に神・仏の前にぬかずき捧げることを表す「敝」とを組み合わせた文字で、神仏の御前に素晴らしいこの布(絹)を捧げるという意味になる。
古代においては、神仏に献上する最上の捧げものは絹布で、これを上位の神仏へ捧げ、中位の神仏には麻布、下 位の神仏には木綿を捧げたようである。いずれも素手で献上するには畏れ多いとして青竹に挟んで献上した。それを「フトミテクラ」と呼んだがそれがやがて儀 式化され、木綿(ゆう・樹皮を細かく裂いたもの)や絹糸の太巻きを青竹に挟むようになり、さらに後には、和紙が使われるようになったと考えられる。
その幣束の種類は
① 神の乗り物としての幣
② 祈祷修法用の幣
③ 五段の霊気(邪気)を乗せる幣
④ 本尊荘厳のための五段幣
⑤ 道場荘厳のための注連幣
⑥ 修法の要具としての幣
などに分けることができる。
幣束には、神仏への捧げものとしての意
したがって幣束は、神仏への捧げものであり・神仏の寄り代であり・神仏そのものであり・結界(聖域)を作るものである。
また色で方角や神仏を現す時もある。
さらに、注連幣(七五三縄)については、縄は、稲の実こそ神仏の化身であり、稲藁は神仏がその威大なる生命力を宿す故、これを用いて注連幣とすることこそ稲魂の働きにて一切のものを清浄化させるのである。
我々がよく目にする幣束は神仏そのものであり、清浄な結界を意味するのである。味合いと鎮魂の神事仏事によって神仏の御魂を招き入れる御神体としての要素がある。